約1300年前から続く伝統を持つ京都府木津川市山城町の「蟹満寺」というお寺は、「今昔物語集」の「蟹の恩返し」という話に関係があるそうです。
毎年4月18日行なわれる「蟹供養放生会(かにくようほうじょうえ)」は、全国各地からカニに関わる業者が参列してカニを供養する法要です。その「蟹の恩返し」とは以下のような話です。
ある村に住んでいた娘が、村人に食べられるところだったカニの命を救いました。いっぽう、娘の父はカエルを食べようとしているヘビを娘を嫁にやるからといってカエルの命を救います。
後日、男がその家に訪れ、約束通り娘を出せと迫ってきました。雨戸を閉ざして閉じこもっていたところ、その男は正体を現し、ヘビの姿で暴れだしました。
怖くなった娘は、観音経を唱えるとヘビは退散しました。夜が明けて家の外に出てみると、ヘビと戦った無数のカニが落ちていました。
親子は娘の身代わりになったカニと死んだヘビの供養のため観音堂を建てて祀ったそうです。
日本人にとってカニはいくつかの昔話にも登場するたいへん親しみのある生き物です。だれでも知っている「さるかに合戦」や、神奈川県の民話「背中の赤いかに」なども有名です。