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ヘイケガニの人為選択説

生物の形質が遺伝するにあたり、自然環境によって淘汰される自然選択に対して、人間の選択があった場合は人為選択といいます。古来より農作物や家畜などに対して行なわれてきた品種改良もその一例です。

甲羅が怒った人の顔にみえるヘイケガニや、鬼の顔にみえるキメンガニというカニがいます。クモやカメムシにも体の模様が人の顔に見えるものがあります。

ヘイケガニについては、平安時代末期の壇ノ浦の戦いで滅んだ平家の亡霊がのりうつったとする伝説があります。伝説ではよくあることですがこれは事実無根です。亡霊がのりうつる対象がなぜカニの甲羅なのかが説明できません。

これに対して、複数の学者が人為選択の結果であると主張しました。捕獲したとき、より恐ろしい顔のヘイケガニほど、食べるのを忌避されて海に戻された結果、ますます怖い顔のカニが生き延びたという説です。

現在、人為選択説は否定されています

一見、もっともらしく思えるこの人為選択説は、以下の三つの理由によって別の学者から否定されています。

壇ノ浦の戦いよりはるか昔、化石の段階で、すでに怒った顔のカニがみつかっていること。

ヘイケガニとその近縁種は平家の亡霊云々の話がない日本以外にも生息していること。

食用ではないので捕獲はされず、人為選択は起こりえないこと。

自然のイタズラは人騒がせなものです。

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